直流電動機の速度・トルクの制御

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速度・トルクの制御方法概論

直流整流子電動機の速度・トルク制御をおこなう方法としては、電動機の端子電圧を変える方法と、界磁の磁束を変える方法がある。
直流電動機は、速度によって、定トルク制御域・定出力領域・特性領域に分類される。
項目定トルク制御域定出力領域特性領域
電圧速度に比例最大値最大値
電流一定一定速度に反比例
トルク一定速度に反比例速度の2乗にに反比例
出力速度に比例一定速度に反比例

\displaystyle N=\frac{E- IA \cdot r}{k \phi}

E 印加電圧 N 回転速度 Ia 電機子電流 r 回転トルク Φ磁束 r=kΦ Ia k 電機子の構造によって決まる定数
直流電動機は、端子に加えた電圧により回転するが、直流電動機自身の回転により発電作用がありその逆起電力の分、電機子電圧が下がりいずれ加速できなくなる。
すなわち、電動機への電流の流し始めは、逆起電力がゼロ又は少ないため、電機子に大きな電流が流れるが、回転の上昇に伴い、逆起電力が増え、電機子電流が少なくなり加速が鈍る。
スムーズに加速するには、電動機の電流を見ながら徐々に電圧を上げていく必要がある。
最大電圧に達しそれ以上に速度を高める場合は、弱め界磁制御をおこなう。
以下に、直巻直流電動機 国鉄MT-54の諸元と直巻直流電動機 TDK-8050A/TDK8051Aを使用した名鉄6800系の加速時の速度と電流の変化を示す。
MT-54に示す通り、電動機の巻線は非常に抵抗値が低く、特に停止時にいきなり定格電圧を加えると大電流が流れ焼損する。

国鉄 MT-54

定格(100%界磁)
項目1時間定格連続定格
端子電圧375V375V
出力120kW105kW
電流360A315A
回転数 100%界磁1,630rpm1,700rpm
回転数 40%界磁2,630rpm2,850rpm
主電動機各コイル抵抗値(110℃)
電機子コイル0.0197Ω
主極コイル0.0168Ω
補極コイル0.0086Ω
全抵抗0.0451Ω

名鉄 6800系


直巻直流電動機 TDK-8050A/TDK8051A 150kW 750V 224A 定格回転数 2000rpm
架線電圧がDC1500Vで直列段 4個、並列段 2個の電動機が直列に接続されている。
電流は、ほぼ定格電流で推移。30km/h程度で直列段から並列段に移行(移行時に一時的に電流が大きく減少する。)、60km/h程度で弱め界磁制御(界磁添加励磁制御)に移行している 60km/hまでは、起動加速度2.0km/h/sを維持。

電圧を変える方法

電圧を変える方法のうち簡単な例は、模型用直流モータを1個の乾電池で駆動する場合と、2個の乾電池を直列に接続する場合のモーターの力の差である。 電車の場合、架線電圧は自由に変えられないので、以下の方法がとられている。

抵抗制御

電動機と直列に抵抗を接続して電圧を抑える。
起動時は、高い抵抗値で起動し、速度上昇に従って、抵抗値を少なくし、最後は抵抗を短絡し、電動機を直結にする。直結になると抵抗制御ができなくなり加速できないため弱め界磁制御に移行する。

抵抗値

直列に接続した抵抗器を複数のスイッチにより短絡し高抵抗値から短絡までをスイッチの組み合わせで実現します。
一般的にカムスイッチによりスイッチが開閉されます。
下図のうち、 直列段の場合A-B間、並列段の場合A-C間が使用されます。
直列に接続されている抵抗が5個なので、前部短絡も含めて6段可能ですが、複数の抵抗間にカムスイッチを増やして、一部抵抗が並列になる組み合わせを設けて7段にしています。 基本的には進段に従い直列に接続されている抵抗が1個ずつ短絡されますが、最終段に近くなると直列と並列の組み合わせになります。
任意の抵抗値の場合、、並列接続の合成抵抗値は各抵抗の逆数の和の逆数、直列接続の合成抵抗値は各抵抗の和になります。
同じ抵抗値の抵抗を2個並列にした場合は、抵抗値が半分、同じ抵抗値の抵抗を3個並列に接続した場合は、抵抗値が1/3になります。
2群に抵抗を分けている場合は交互に抵抗を短絡して段数を増やしスムーズに加速させます。 以下に組み合わせ例を示します。
なお、鉄道では一般的な電気回路の抵抗や接触器のシンボルと違った表現が用いられます。下図の右上に凡例を示しています。

直列並列切り替え

複数の電動機をグループまたは群に分け、低速時は直列、速度が上昇すると並列に接続する方法である。
抵抗制御と組み合わせると抵抗制御段数の倍に制御段数が増え、かつ損失も少なくなる。
たとえば、1M1Tの編成で、4基の主電動機を制御する場合(1C4M)、台車単位すなわち2基を永久直列としそれぞれの台車を1群とする、直列段は、それぞれの群を直列に接続し電動機1基当たり1/4の電圧になる。並列段ではそれぞれの群を並列に接続するため電動機1基当たり1/2の電圧となる。
4両編成でMM'で2M2Tで、8基の電動機(1C8M)を制御する場合、1両すなわち4基を永久直列としそれぞれの車両を1群とする。直列は、1基の電動機は1/8の電圧、直列段は1/4の電圧となる。
直並列の切り替えの際、渡り段を挟む。
渡りの回路構成として、短絡渡りと橋絡渡りがある。
短絡渡りは、1群の電動機を短絡する。 電車で一般に用いられる、橋絡渡りの場合、抵抗が2群以上、必要となる。
直流架線電圧1500Vの場合の組み合わせ例を以下に示す。
電動機個数直列段直並列段並列段電動機端子電圧(最大) 直列段/並列段採用例
44個直列-2個直列を1群として2群並列に接続375V/750V1M1Tの編成 2軸ボギー2台車
88個直列-4個直列を1群として2群並列に接続187.5V/375V2M2Tの編成 2軸ボギー2台車
66個直列3個直列を1群として2群並列に接続2個直列を1群として3群並列に接続250V/500V/750V電気機関車等 2軸ボギー3台車
以下に、4個の電動機により直並列組合せた例を示す。

直並列回路


電動機への印加電圧

以下の図の左側は、抵抗制御単独、右図は抵抗制御と組合せ制御を併用した場合の電動機への印加電圧を示す。
図の赤色で着色した部分が抵抗で消費した電圧を示す。右図の方が赤色の面積が少なくロスが少ないことがわかる。

電車で一般的な、2軸ボギー2台車の場合

2群の場合、1個目の群は架線側に電動機・アース側に抵抗、2個目の群は、架線側に抵抗・アース側に電動機として、直列並列の切り替えは3個の接触器(スイッチ)により行う。 抵抗器群は2群設置されており、加速に応じて交互に抵抗を短絡していく。
直列段は抵抗の2群が直列に接続され、並列段ではそれぞれの群に独立して接続される。

電気機関車等 2軸ボギー3台車の場合

直列段で6個直列、 直並列段では、3個直列を一つの群として2群を並列に接続する。 並列段では2個直列を一つの群として3群を並列に接続する。
2個永久直列が2組で4個、残りは、永久直列となっていない。
抵抗器は2~3群用意され、直列段では全部抵抗群を直列、 並列段では抵抗が3群用意されている場合は、それぞれの群に独立して抵抗が接続される。2群の場合は、2群の抵抗が並列に接続される。
直並列段では抵抗器は2群のみ使用され、3群目の抵抗は使用されない。

直列つなぎ

電車で2軸ボギー2台車で、橋絡渡りの場合の、2群の電動機及び抵抗を直列に接続した例を示す。
具体的には、図中のSの接触器をOn、P・Sの接触器をOffにすると2群が直列に接続される。
最大の抵抗値から加速に従い、抵抗を抜いて行き、直結になると、渡りを経由して並列段に移行する。

橋絡渡り

電車で2軸ボギー2台車で、橋絡渡りの場合の、直列最終段の後にさらに図中のP・Sの接触器をOnした状態であり、S・P・Sの接触器すべてがOnであり、ブリッジ回路を構築している。

並列つなぎ

電車で2軸ボギー2台車で、橋絡渡りを採用した場合の並列段では、2群の電動機及び抵抗を並列に接続する。
具体的には、図中のSの接触器をOff、P・Sの接触器をOnにすると2群が並列に接続される。
最大の抵抗値から加速に従い、抵抗を抜いて行き、直結になると、渡りを経由して並列段に移行する。

界磁の磁束を変える方法

電動機の端子電圧が最大値に達した場合、抵抗制御では抵抗が0Ωであり制御できない。この場合、界磁制御を使用する。また、始動時にショックを弱めるために界磁を抑える場合がある。

弱め界磁制御


\displaystyle N=\frac{E- IA \cdot r}{k \phi}

E 印加電圧 N 回転速度 Ia 電機子電流 r 回転トルク Φ磁束 r=kΦ Ia k 電機子の構造によって決まる定数
上式より電圧が最大値に達した後は、分母の磁束φを減らせば、回転数を上げることができる。
界磁の電流を抑えると磁束を減らすことができ回転数が上昇する。 弱め界磁は、整流性能を低下させるので、限度があり一般的に40~50%程度である。この値は、界磁電流の減少率を示している。
具体的には界磁の電流を抵抗等によりバイパスさせ電流を減らす、分巻線の磁束をチョッパ等で制御する、あらかじめ弱め界磁状態にしておき、別の電源により界磁に電流を流し調整する方法がある。

抵抗制御

抵抗で行う場合は、界磁に抵抗を並列に接続する。一般的には3~4段程度の制御である。
電流の急変に対して、整流性能を確保するために、誘導分路(インダクタンス)を挿入している。

界磁チョッパ制御方式

複巻電動機の界磁にもうけられた分巻巻線に直列にチョッパ回路を追加し、通電率を制御することにより、界磁の電流を制御する。分巻巻線の開放時は直巻電動機と同様となる。 分巻巻線は、直巻巻線の20~30倍の巻線数である。制御電流が数10A程度であり、電機子チョッパに比べて5%以下の容量で制御でき経済的である。ただし、電機子チョッパに比べて制御範囲が狭いため、低速度では回生失効する。 分巻巻線はたとえば1C8M方式の場合、8基の分巻巻線を直列に接続し、片方は架線、片方はアース側に接続し、いずれかに直列にチョッパを接続している。
分巻界磁は、抵抗制御中、直巻界磁・電機子電流に比例するように全界磁制御としている。 抵抗制御が終了すると、弱め界磁制御、ブレーキ時は回生制御に移行する。 弱め界磁制御  分巻界磁の電流を少なくして逆起電力を押さる。 回生制御  分巻界磁の電流を大きくして逆起電力を増やす。

国鉄では用いられなかったが、抵抗制御に安価に回生制御を付加できることから、民鉄では幅広く採用された。 電動機の定格電圧を下げて、発電や回生時の電圧を高くすることによりより回生範囲が増える。 吊り掛け駆動が車輪からの振動を直接うけるのに対して、カルダン駆動は、振動を吸収した後に電動機に加わるため強度をさげることができる。特に狭軌の場合、バックゲージ(車輪の内側の間隔)が990mmであり、電動機の直径は600mm程度が上限となる。電動機の出力はおよそ鉄心の寸法のD2Lで決まるため、鉄心長さを広げることは重要である。また、中空軸平行カルダンによりたわみ継手の軸長が短くなり、電機子の鉄心長が長くでき出力が向上できる。出力が大きければ、全電動車編成から2M2Tなどの編成が組め、経済的となる。 電動機の低電圧化・高速化・大出力化の流れの中、より多数の電動機を制御する必要があるため、2両の電動車で1ユニットを組む、MM'形式に採用された。 複巻電動機を使用するため、架線電圧の急増に対して、界磁制御が追い付かず、電機子の電流の増加に対して界磁分巻線が増えないため、弱め界磁状態となり、さらに電機子電流が増加するためフラッシュオーバーしやすい。 整流子にカーボンの粉末が発生しやすい欠点がある。

界磁添加励磁制御

補助電源装置で作成される2相又は3相交流電源を位相制御で直流に整流することにより任意の電流値を 界磁に添加し弱め界磁及び回生制御をしている。 界磁に分流回路をもうけ、分流回路を使用しているときは、弱め界磁制御が最大となるようにしている。 ここに補助電源装置の交流を整流して電流を界磁に加える。電流の大きさは、位相により調整する。 抵抗制御終了後、分流回路を接続し、界磁制御を開始する。 国鉄では界磁チョッパは使用されず本形式が主流となった。 また、回生のついていない車両の直巻電動機を流用し制御装置を新生または界磁添加励磁制御を付加し、回生を付加可能である。 弱め界磁制御  分流回路に流れる電流で減る電流を励磁電流で補う。 補う量を増やすと界磁の電流が大きくなり、逆起電力が大きくなる。減らすと弱め界磁となる。 回生制御  分巻界磁の電流を大きくして逆起電力を増やす。  速度の低下と共に逆起電力が減るため、励磁電流を増やして対応する。 直巻電動機を用いるため、従来の抵抗制御車から電動機を機器流用することが可能である。

制御とノッチ(進段)

電動機が、ある電圧を印加して加速しているとき、加速に従い、逆起電力により電流が減少し加速しなくなる。
これを防ぐために、ある程度電流が下がると抵抗制御の場合、一部の抵抗器を短絡し、電圧を上昇させ、電流を復活させる。これをノッチを進める(進段)という。
ノッチを進める電流値を限流値という。

限流値

自動進段の場合、限流値を下回った場合にノッチを進める。
限流値は、起動加速を高くしたり、客が多いときは限流値を大きくとり、早めに進段するようにする。高加速度が要求される場合は段数を多くとる。
空気バネの車両は、車高が一定になるように空気バネの空気圧を自動調整している。これは乗員が多く重量が重いと車体が下がるため空気弁が開いて空気ばねの圧力を高くして車高を維持する乗員が多い場合、空気バネの圧力が高いため、圧力の値により限流値が多くなるようにしている。この装置を応荷重装置と呼ぶ。

直接制御

路面電車等の小規模の場合に用いられる。
運転台に架線電圧を直接引き込み、ノッチハンドルにより直接接触器を開閉し、主電動機を制御する。 一人の運転手で、多数の電車を連結し、同時に制御することができない。

間接制御

運転台のノッチハンドルにより、接触器の開閉を間接的に制御する。 間接制御の場合は、ノッチハンドルは、マスコンハンドルと呼ばれる。
大容量の主電動機の電車に用いられる。 また、引き通し線で制御する統括制御にも用いられる。

自動進段

マスコンにより指定したノッチまで自動的に接触器を制御し加速する。マスコンより制御のノッチは多い。 応荷重装置等を備え、乗員の人数に左右されず、起動加速度を一定に保つことができるようなっているのが普通である。 また、編成が長い場合でも対応可能である。
各段の制御は、カム軸によって行われる。
加速中、限流値を下回ると限流継電器が作動し、パイロットモーターによりカム軸が1ステップ回転し、進段する。
動作の説明は電動カム軸抵抗制御で説明する。
力行ハンドルを時計方向に回すと力行、車両によっては、反時計方向に回すと直列段のみで並列段に移行しない機能、抑速(ようそく)などがある場合がある。

手動進段

ノッチハンドルにより直接運転手が実際のノッチを制御する。自動的に進段しないため、乗客数・連結数により加速が左右され、進段が運転手の技量に左右されるので長い編成には向かない。

前後切り替え

電車は自動車と違い、レールの上しか走れず、終点についたら前後逆に走行する。 電動機は電流の方向により回転方法を変えることが可能である。ちなみにディーゼル車では逆転器により回転方向を逆転させる。
通常、力行ハンドルと、前後の切り替えは別ハンドルである。
直列・並列を組み合わせる場合、回路の都合上、逆転器(レバーサー)がそれぞれの群に必要となる。
回転方向が一定の場合は、電機子反作用(界磁の磁束が、電機子の磁束により電機的中性点が回転方向に移動する)の対応としてブラシの位置をずらすことが可能であるが、逆回転の時、悪影響が出るので電車の電動機ではずらさない。
電機子反作用を打ち消すために補極を設けている。
直巻電動機では界磁コイルの電流の流れる方向をレバーサーにより切り替える。
複巻電動機では界磁コイルは直巻と並列巻の2つあり切り替え回路が複雑となるため、電機子側の電流の流れを変えている。
以下に直巻電動機の切り替え例を示す。
この切り替えのために、電機子と界磁の引き出し線は電動機内部で直列に接続されず、別々に引き出している。

直流電動機

直流電動機の構造は直流電動機を参照されたい。ここでは電車での特有事項を記述する。

直巻

界磁コイルと電機子コイルが直列に接続する。
始動トルクが大きく取れることと、入力電圧を変えることにより広範囲な回転速度に適応しているため電気鉄道に広く使われてきた。
複巻に比べて、フラッシュオーバーしにくいため、架線電圧が直流1500Vにおいて、2個直列が可能であり、1両の電動車で直並列の組み合わせが可能となる。
定格が750Vの電動機が存在する。
 架線の電圧が急上昇したとき、電機子・界磁も両方とも同じだけ電流が増えるため逆起電力も増え電流の急増が抑えられる。 起動時に大きなトルクが得られる。 直列接続時で、1個の電動機が空転した場合、回転が上がってもトルクが減らないためさらに回転が上昇し、他の電動機の分担電圧の一部を負担してしまうため空転が収まりにくい。空転を抑えるには、電流を抑えるしかない。

分巻

界磁コイルと電機子コイルを並列に接続して使用する。

複巻

複巻は、界磁コイルが直巻と分巻の2つある。
直巻に比べて回転数によるトルクの変化が小さい。回生や低速走行に適しているため民鉄で用いられた。
整流特性がやや悪い。フラッシュオーバーしやすいため、定格電圧を高くできない。(架線電圧が直流1500Vにおいて、2個直列が難しい)
界磁制御による回転数の制御範囲が狭い。
 架線電圧が急上昇したとき電機子・直巻界磁分が増えるが、分巻界磁は増えないため、一時的に弱め界磁状態となり、逆起電力が減り、電機子電流が急増する。架線電圧の上昇によって、分巻線の電流を増やすように制御はできるが応答性がよくないため電流の急増が起こる場合がある。 この一瞬の大電流がブラシと整流子の間を流れるため火花が出やすい。 電流の変化に対してトルクの変動が少ない。 空転時、回転が上がっても分巻は界磁が増えず、トルクが大きくならないため空転が収まりがよい。

断流器


国鉄等では遮断器と呼ぶ場合がある。
一般的に電車の床下に箱状でハモニカのような形状である。
上の写真の箱の中には、3つの断流器と高速遮断器と直並列切替えの断流器が内臓されている。
直流電化の場合1500Vが標準である。(他に600V 750V)
高電圧はスイッチをoffにしても接点間にアーク放電が起こり遮断できない。
アーク放電とは、高電圧により気体中の電子が加速され、気体中の中性粒子と衝突して電離を繰り返すうちに荷電粒子が急増し、接点間に電流が流れる。電離化によりイオン化が置き、プラズマが発生しており、その中を電流が流れている状態である。電流が狭い空間に集中しているため、電子・中性粒子・イオンとの衝突等がはげしく、電気・熱・光エネルギーに変化し、アークは5000℃以上の高音になり気体は励起状態となります。
アーク溶接はそれを応用したものである。
特に直流の場合は、交流と違い電流が途切れないためアークが切れにくい。 確実に電源の入りきりをするため断流器(遮断機)が用いられる。 デアイオン式と呼ばれる方式が一般である。 遮断器を解放したときにアークが発生する。その際にコイルによりアークに磁界を与える。磁界によりフレミングの右手の法則により、アークがグリッド側に移動し、アーク距離が延ばされこと、アークグリッドにより冷却されアーク抵抗が大きくなること、グリッドによりアークが分断されることによりアークが維持できなくなり、消弧する。消弧の時間は1000分の10秒単位である。
ノッチオフ時など断流器が開放する際にアークが一瞬飛び大きな音が発生する。 1500V以上の場合、断流器を2個直列に接続し、1個の断流器に並列に抵抗をつなぎ、解放時の負担を少なくするなどの工夫が見られる。(抵抗入断流器を先に開放し寸秒後にもう一方を開放)

上図のLBはラインブレーカー(断流器又は遮断器) HB(高速遮断器) Arr:避雷器
VVVF車では、ノッチオフはインバーターで電流を切るため断流器は通電のままであり音は発生しない。
以下の再生ボタンをクリックすると断流器の解放音が生成される。(名鉄6013F ノッチオフ時)(1秒後にパーンと表現できる音が聞こえる。)

下図は、断流器の模式図であり、縦線の赤がグリッドである。
「閉→解放」のプッシュボタンをクリックすると断流器の動作アニメーションが表示される。

回生

直流電動機は、発電機としても機能する。 発電ブレーキは、電動機で発電した電気を1つの編成内で抵抗により熱に変換する方法である。 走行速度が低いときは十分に制動がえられないので、空気ブレーキの併用が行われる。 発電した電気を架線に返さないため架線電圧が高くても失効しない。 力行時より制動時の方が加速度が大きく大きなエネルギーが発生するため抵抗器の容量を大きくする必要がある。 また、電動機1台あたりの定格電圧を低くし、発電圧を高めにとれるようするため制御台数を8個にするMM'方式の例もある。 発電ブレーキが作動すると抵抗により床が熱くなったり、夏場にドアを開けた際、熱風が吹き込んで来る場合がある。冬場は床下暖房として有効に機能する。 回生ブレーキは、電動機で発電した電気を架線に返し、同一き電区間内を走行する別の列車の力行で使用することにより電気を有効に活用する方法である。半導体の進歩や制御技術の向上により可能となった方法である。なお、VVVFが広く使われている現在、1500Vかつ大電流を制御可能な半導体があり、直流電動機をチョッパで界磁・電機子そのものを抵抗制御なしで制御可能と思われる。ただし、直流電動機は誘導電動機に対して整流子・ブラシが必要であり、構造が複雑、誘導電動機に対して出力が小さい、メンテナンスがかかる等のデメリットが存在するため、広く使われなかった。
走行速度が低いときや架線電圧が高いときは、回生ができず失効するため発電ブレーキの併用や空気ブレーキの併用が行われる。また、速度が高いとき界磁制御により発電電圧を低くできない場合も回生失効する。
また、閑散とした路線で1編成しか運行していない場合には、回生が使用できない。 機器流用車では、回生ブレーキ時、電動機が直列接続しかできない車両があるため、回生範囲が限定される。 回生には、弱め界磁制御で触れた、界磁チョッパ制御・界磁添加励磁制御が用いられる。