水平対向4気筒エンジンの慣性力・偶力

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概要

本ページはHTML5でSVGを使用しています。閲覧には、対応したブラウザを使用してください。
JavaScriptでエンジンの各図を動かしていますので、JavaScriptが動作するようにしてください。
以下の水平対向4気筒4ストロークエンジンについて解析する。
慣性力・慣性偶力についてはエンジンの慣性力と慣性偶力の概論を参照されたい。
シリンダは前から左バンクが1,3、右バンクが2,4の順番である。
前から見るとエンジンは右回転である。
点火順序は 1-3-2-4 とする。
点火間隔は720度/4=180度である。
クランクピンの配置は、下図のとおりである。
1,4 2,3 SVGの代替画像
角度を入力して指定角度をクリックすると横断図及び平面図が変化します。
自動回転をクリックするとエンジンが回転します。回転を止めるにはSTOPをクリックします。
平面図は、2次慣性偶力によるエンジンのすりこ木運動をエミュレートしています。
角度θ=

※θはクランクシャフトを中心とし水平方向とクランクピンに挟まれた右回りの角度である。

各シリンダー横断図・平面図(2次慣性偶力)

SVGの代替画像

特徴

ボクサーがなぐり合っているようにも見えるのでボクサーエンジンとも呼ばれる。
左右のピストンが逆方向に動作するため、慣性力が打ち消される。したがって、クランクシャフトにウェイトがついていないのでクランクシャフトが軽くなる。
直列4気筒エンジンのウィークポイントである二次慣性力が発生しない。
SUBARUの場合 クランクシャフトの揺り振動や曲げ振動を抑制するために直列4気筒エンジンと同じくメインベアリングが5個ベアリングとなっている。
水平対向の1つのメリットである全長が短いという利点を生かすために、メインベアリングの幅やクランクウェブを薄くしている。
メインベアリングの幅は狭くしづらいのでクランクウェブを極端に薄くしている。人によってはカミソリクランクと呼んでいる人もいる。
クランクウェブが薄いのでペラペラした感じで意外と硬性がないのでこの辺がごろごろ音などの下品な音につながりやすい。
エンジンが横長になるので、タイヤの切れ角を確保するためにショートストロークのエンジンにしたがる。それでも小回りの利かない車になりやすい。
ちなみに、V型バンク角180度エンジンは左右バンクでクランクピンを共有しているため、左が上死点ならば右は下死点となる。
2次慣性偶力がバランスしないため完全バランスとは呼ばれない。

各気筒の行程

下図は青が吸気バルブが開いている期間、赤が排気バルブが開いている期間を示している。グラフの左側の数字はシリンダ番号を示している。
左右バンクの排気管を集合させるまでの長さがことなると排気干渉がする。 周期が2気筒エンジンと同じになりいわゆるボクサーサウンドというドタドタとした音である。
ちなみに4気筒エンジンのプラグコードを1本抜くと似たような音がする。
SVGの代替画像

1次慣性力

エンジンが1回転に1回発生する成分で、cos \theta に係数を乗じたものである。
右方向を+とし1-2シリンダを合成すると
-\cos(\theta)+\cos \theta=0 なので、1次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない

2次慣性力

エンジンが1回転に2回発生する成分で、cos 2 \theta に係数を乗じたものである。
右方向を+とし1-2シリンダを合成すると
-\cos(2 \theta)+\cos ( 2\theta)=0 なので、2次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない

4次慣性力

エンジンが1回転に4回発生する成分で、cos 4 \theta に係数を乗じたものである。
右方向を+とし1-2シリンダを合成すると
-\cos(4 \theta)+\cos ( 4\theta)=0 なので、4次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない

6次慣性力

エンジンが1回転に2回発生する成分で、cos 6 \theta に係数を乗じたものである。
右方向を+とし1-2シリンダを合成すると
-\cos(6 \theta)+\cos ( 6\theta)=0 なので、6次慣性力はキャンセルされる。 他の気筒も同様にキャンセルされるのでエンジン全体で発生しない

1次慣性偶力

上からエンジンを見ると重心に対して前後方向が対称でないためモーメントが発生することがある。
ボアピッチをa、左右間のシリンダのずれをbとする。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とすると
-1.5b \cos \theta + 0.5b \cos \theta - 0.5b \cos (\theta-\pi)+1.5b \cos (\theta - \pi)
=-1.5b ( \cos \theta - \cos (\theta-\pi)) +0.5 b ( \cos \theta - \cos ( \theta-\pi))
=-b ( \cos \theta - \cos (\theta-\pi))=0
1次モーメントはキャンセルされる。

2次慣性偶力

上からエンジンを見ると重心に対して前後方向が対称でないためモーメントが発生する。
ボアピッチをa、左右間のシリンダのずれをbとする。
第2シリンダーが右へ回る方向を+とすると
-1.5b \cos (2 \theta) + 0.5b \cos (2\theta) - 0.5b \cos (2\theta-\pi)+1.5b \cos (2\theta - \pi)
=-b \cos (2 \theta)+b \cos (2\theta - \pi)
=-2b \cos 2 \theta
実際の慣性偶力の値は、以下のとおりである。
\displaystyle -M \omega^2 S a (\frac{1}{\lambda}+\frac{1}{64 \lambda^3}+\frac{15}{4096 \lambda^5})\cos 2 \theta
M:往復質量/気筒 S:ストローク ω:角速度 πn/30
n:エンジン回転数 rpm